2004/11/06
10月のパリは既に「秋深まり」という感じで、街並や建造物を特に素敵に
見せてくれる季節に感じました。街の中は、フランスの方だけでなく、観光客やパリコレの関係者など色々な国の方で賑わっています。そのような中での歌舞伎公演です。劇場はフランス国立シャイヨー劇場です。ロビーの大窓からは、
エッフェル塔を目の前に見る事が出来る素敵な劇場です。
さあ、「パリ公演」の幕開けです!
序幕は「鳥辺山心中」です。「源三郎」を演じさせて頂くのは二度目です。兄市之助に対して弟として意見をし、半九郎に対しては八つ当たりから段々エキサイトして決闘に至るという役です。初演の時は、頭の中では理解してながらも、最初から最後迄、力んでしまいました。今回は大分無駄な力が抜けて演じることが出来たように思います。そして、今回は立ち回りの時の刀を、臨場感を出す為にジュラルミンの刀を使用しました。
因みに「鳥辺山心中」を仏語では「Double Suicide au mont Toribe(ドゥブル スイシィード オ モン トリべ)」と言います。「心中」という意味や言葉がないので、「ダブルの自殺」と表すそうです。
二幕目は「口上」です。團十郎のお兄さん、海老蔵さん、菊之助さん、
右之助のお兄さんと私が並びました。仏語と日本語を使っての口上ということで、幕が開くまでは皆さん一人一人自分の世界に入って、口の中でブツブツと念仏を唱えるように仏語の口上のおさらいです。一回詰まったら後が出てこないので、それは必死です。仏語の字幕スーパーが舞台の上にあるのですが、仏語の口上の時も、仏語でスーパーが出ているので尚のことです。その様な中で、成田屋のお兄さんは滔々と仏語で口上を述べられ大喝采を受けていらっしゃいました。・・・さすがです。皆さんもかなりご心配のことと思いますが、成田屋のお兄さんは御病気だったことが嘘のように、とてもお元気でした。本当によかったです。兎にも角にも大緊張の口上でした。
三幕目は「鏡獅子」です。初役のご家老をさせて頂きました。真っ白のかつらをかぶったのは初めてです。40年経つとこんな感じかな?
海老蔵さんは何度もカーテンコールを受けて、感無量の様子でした。
お客様は連日満員で、とても一生懸命ご覧下さっていると感じました。
この公演では日本からのスッタフの方々もシャイヨーのスタッフの方々も、
とても頑張って下さいました。日本と仏国の大道具さんが一緒に「アン、ドゥウ、トゥロァ」と声をかけながら運んでいたり、楽屋口のお兄さんが何時の間にか「オッハヨーゴザイマス」と挨拶をしてくれたり、楽屋内もとても良い雰囲気でした。通訳の方々、制作の方々、衣装さん、床山さん、小道具さん、大道具さん、アルバイトの方々・・・この公演に携った全ての方々のお陰で舞台を勤めることが出来ました。心から感謝しております。
そして、ひとつの舞台をみんなで創る素晴らしさを改めて感じた次第です。
又、三週間の滞在となると本当に「生活」でした。色々と教えて頂き、フォローして下さいました、ノンフィクションライターの川島ルミ子さん、レース関係の杉山きよみさん、源吉兆庵の佐々木麻里奈さん、そしてJakob+Macfarlaneの菅原大輔君、有難うございました。皆さんのお陰で楽しく滞在できました。そして、パリで様々な分野のお仕事で頑張っていらっしゃる方々に御目に掛かれたことを嬉しく思っております。
この滞在で色々なことを体験させて頂き、貴重な三週間でした。今回学んだことを、今後に繋げていくように努力したいと思います。
<川島ルミ子さん著書のご紹介>
「マリー・アントワネットと悲運の王子」 講談社、α文庫
「ディオールと華麗なるセレブリティの物語」 講談社
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